2008年4月11日、総務省は産学間連携の取り組みとして主催した「インターネットの円滑なIPv6移行に関する調査研究会」の報告書(案)(以下、報告書(案))を発表しました。第1回は、この報告書(案)について、IPv4アドレス枯渇問題を「IPv6アドレスへの円滑な移行(IPv6化)」という観点で取り上げます。前編は報告書(案)全般についてのご紹介、後編では報告書(案)で提言されているアクションプランについて具体的にご紹介します。
1.報告書(案)の要点 ( IPv4アドレス在庫の現状とインターネットの継続性確保の手段 | IPv4アドレス在庫枯渇へのアクションプランと推進体制 ) | 2.アドレス在庫枯渇への対応方策 ( IPv4アドレス在庫枯渇へのアクションプランと推進体制 | 対応方策の導入と時期 )
報告書(案)の要点のみを簡潔にまとめました。IPv4アドレス不足に対し、インターネットにかかわる多種多様なプレイヤーがおこなうべきアクションについて網羅的に取りまとめた内容をご紹介します。

最新の調査では、現在インターネットで利用されているIPv4アドレスの国際的在庫は3年程度で枯渇すると予測されています。IPv4アドレスが枯渇してもインターネットの既存利用者は引き続き利用可能ですが、その一方で、新規利用者や新たなサービスを受け入れることが困難になります。
インターネットの継続的な発展を確保するための手段はいくつか考えられますが、「期限内での対応性」、「インターネット上のサービスの継続性」、「効果の永続性」という三つの観点を全て満たすには、
- 新たなアドレス体系への移行すること(IPv6への移行)
- 1つのアドレスを複数のユーザで共有すること
の二つを組み合わせて行う必要があります。

IPv4アドレス在庫枯渇への対応方策は、
- IPv4アドレス在庫枯渇前(2010年まで)
- IPv4アドレス在庫枯渇初期 (2011年初頭から)
- IPv4アドレス在庫枯渇中期(早ければ2012年初頭)
の3段階を経て導入し、そのうえでIPv4を利用する必要性が減少した段階(IPv4アドレス枯渇最終期)で、「ネットワーク」及び「サービス」によるIPv4対応を終了し、インターネットのIPv6への移行とすることが適当と言えます。
多様な対応要件(課題)を解決するためには、インターネットに係る全てのプレイヤー(関係者)を明らかにし、その上で、誰が、何時までに、何をすべきか をアクションプランとして取りまとめ、我が国が一体となった取り組みを推進することが必要であり、そのためには
- インターネットに直接的に係る「ネットワーク」、「サービス」、「ユーザ」※1の各直接関係者によるアクションプラン
- 直接関係者を支援すべき立場にある「メーカ/ベンダ」、「システムインテグレータ」、「アドレス管理団体等」、「政府」などによる各間接関係者によるアクションプラン
の両方を策定し、「アクションプラン全体図」として共有することが必要条件です。 なお、アクションプランは、あくまでも標準的な対応を想定したものとなることから、各関係者がそれぞれの立場で具体的なIPv6対応計画を策定し、「アクションプラン全体図」における対応計画と連動させて実行することが重要です。

※1 インターネットの構成要素を「ネットワーク」、「サービス」、「ユーザ」の3つに区分しています。一般のISPなどは、「ネットワーク」を提供すると共に、メールなどの「サービス」も提供しています。これらは基本的要素でもあり、それぞれを担当するプレイヤー(関係者)の役割を指す場合もあります。
まずは、 2008年~2010年までの<IPv4アドレス枯渇前>の準備期間において、関係者が互いに協調・連携しながら、2011年から始まる<IPv4アドレス在庫枯渇期>での本格的対応に向けた準備を完了させておくことが極めて重要です。そのためには、2008年の現時点から、特に「ネットワーク」と「サービス」に係る事業者が、このアクションプランに則って計画検討を開始することによって、「アクションプラン全体図」に示された行動を牽引することが重要となります。
政府のみならず、多数の民間企業、事業者、企業などの個々のプレーヤー(関係者)が、それぞれの役割を十分認識した上で自らの対応を推進することが極めて重要であり、対応にあたっては、関係者間での幅広い情報の共有、全体の進捗状況の把握、進捗が遅れている関係者への対応促進等の体制が必要となります。このため、アクションプランの推進に当たっては、官民一体となった推進組織が必要となることから、インターネットのIPv6化に関わる推進団体である「IPv6普及・高度化推進協議会」について
- アクションプランの進捗状況およびインターネットのIPv6化の進捗状況把握
- アクションプラン推進に係る情報共有
- テストベッドの構築・運用などによる関係者の知見向上
- 必要に応じたアクションプランの改定検討
などに係る機能を強化し、インターネットにおけるIPv4アドレス枯渇対応/IPv6化の推進体制とすることが適当であると言えます。
IPv4アドレスによる制約およびその影響を乗り越え、更なるインターネットの発のために必要となる方策について、研究会で検討した結果が報告書(案)にまとめられています。
具体的にどのような方策が必要なのか、そしていつからどのように導入していくべきなのか、報告書(案)の内容に基づきまとめて紹介します。

IPv4アドレス枯渇による影響を踏まえ、今後もインターネットの継続的な発展を確保していくための基本的な要件と実施手段を挙げて比較検討し、その上で、費用面、サービス提供の制約面を含めて対応方策の総合評価を行い、以下の二つを組み合わせて行うことが必要であると提言しています。
- 本格的な対応方策として、新たなアドレス体系IPv6への移行の実施。
- 当初の対応策として、「NAT/NAPT※2の利用」により、1つのアドレスを複数のユーザでの共有を図る。
表 1:対応方策の比較
| |
NAT/NAPTの利用 |
割り振り済みの
IPv4アドレスの再配分 |
IPv6への移行 |
| 期限内での方策実現可能性 |
○ |
疑問 |
極めて困難 |
| サービスの継続性 |
制限が生じる |
○ |
○ |
| 効果の永続性 |
疑問 |
× |
○ |
※2 NAT/NAPT(Network Address Translation / Network Address Port Translation)組織でしか使えないプライベートIPアドレスとインターネット上で使えるグローバルIPアドレスを相互変換すること。NATはIPアドレスのみを交換し、NAPTはIPアドレスに加えてポート番号も変換する。

対応方策の導入手順として、IPv4アドレス枯渇の現状に照らした対応が必要となることから、以下の1~3の3段階を経て、4のIPv4アドレス枯渇最終期を以って「ネットワーク」及び「サービス」によるIPv4対応を終了し、“インターネットのIPv6への移行“とするのが適当であるとしております。
(1) IPv4アドレス在庫枯渇前(2010年まで)
新規のIPv4アドレスがなくなった後も、新規ユーザを受け入れ可能とするための準備期間
(2) IPv4アドレス在庫枯渇初期(2011年初頭から)
新規のIPv4アドレスが無くなった段階、新規の「ユーザ」はNAT/NAPT下へ収容される時期
(3) IPv4アドレス在庫枯渇中期(早ければ2012年初頭)
既存顧客である「ユーザ」についてもNAT/NAPT下の収容の変更が必要となる時期
(4) IPv4アドレス枯渇最終期(上記3段階を経て、IPv4を利用する必要性が十分減少した時期)
インターネットの基本要素を、「ネットワーク」、「サービス」、「ユーザ」の3つに区分・定義し、IPv4在庫枯渇の各段階における対応要件を紹介しています。
| (1)IPv4アドレス在庫枯渇前(2010年まで)の対応要件 |
1.「IPv4アドレス在庫枯渇前」の定義
新規のIPv4アドレスがなくなった後も、新規ユーザを受け入可能とするための準備期間であり、既存のIPv4によるインターネット接続環境を維持しつつ、「ユーザ」「サービス」が、本質的な対応であるIPv6への移行が可能な環境を整備する期間をいう。
2.インターネット基本要素ごとの対応要件
a)「ネットワーク」
IPv4ネットワークおよびIPv6ネットワークの双方を構築し、遅くともIPv4アドレス在庫枯渇前までにIPv6による接続を基本サービスに含まれるものとして提供する。
b)「サービス」
可能な限りIPv4アドレス在庫枯渇前までに、IPv4/IPv6両対応化を図るとともに、NAT/NAPT下に収容された「ユーザ」にも対応したサービス提供方式に改める。なお、IPv6への対応は、システムの変更による方法と、トランスレータを用いる方法がある。
c)「ユーザ」
「ユーザ」は、インターネットに接続する機器や当該機器に導入するソフトウェアなどについて、調達や更改、改修の時期を捉えて可能な限りIPv4/IPv6対応化を図ることが望ましく、(1)(2)のIPv6対応状況に応じて、IPv6対応を開始する。
| (2)IPv4アドレス在庫枯渇期初期(2011年初頭)からの対応要件 |
1.「 IPv4アドレス在庫枯渇期初期」の定義
新規のIPv4アドレスが無くなった段階であり、新規の「ユーザ」に対してはGlobal IPv4アドレスを払い出すことが困難となり、これら「ユーザ」についてはNAT/NAPT下へ収容される時期をいう。
2.インターネット基本要素ごとの対応要件
a)「ネットワーク」
IPv4アドレス提供の困難度上昇に合わせ、新規顧客についてはNAT/NAPT下への収容を開始する。全てのユーザに提供可能なGlobal IPアドレスはIPv6のみとなる。
b)「サービス」
IPv4/IPv6両対応化を図ると共に、IPv4対応部分については、NAT/NAPT下に収容された「ユーザ」にも対応したサービス提供方式とする。なお、これが実施できない「サービス」は、IPv4アドレス在庫枯渇期初期以降に「ネットワーク」に接続する「ユーザ」からは接続不能となり、接続不能な「ユーザ」が徐々に増加することに留意する必要がある。
c)「ユーザ」
可能な限りインターネットに接続する機器や当該機器に導入するソフトウェアなどについて、IPv4/IPv6両対応化を早期に進める。
| (3)IPv4アドレス在庫枯渇期中期(早ければ2012年初頭)からの対応要件 |
1.「IPv4アドレス在庫枯渇期中期」の定義
Global IPアドレスが必須となる「サービス」に対して割り当てるGlobal IPv4アドレスが逼迫し、既存顧客である「ユーザ」についてもNAT/NAPT下の収容への変更が必要となる時期をいう。
2.インターネット基本要素ごとの対応要件
a)「ネットワーク」
既存の顧客である「ユーザ」についてもNAT/NAPT下の収容への変更を開始する。「ネットワーク」による接続サービスはIPv6による提供が基本となる。
b)「サービス」
IPv6による提供を基本とする。「ユーザ」に残るIPv4のみに対応した機器/ソフトウェア向けにIPv4による提供を継続する。 なお、これが実施できない「サービス」は、接続不能な「ユーザ」が一層増加する一方で、接続可能な「ユーザ」数は急速にゼロに漸近することとなる。
c)「ユーザ」
可能な限り、IPv6を利用する。
>> 後編に続く(近日公開) |