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IPv6ご意見番


IPv6をビジネスに生かすために ~東京大学江崎教授を迎えて~


<鼎談>
東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授、インテック・ネットコア顧問 江崎浩氏
インテック取締役執行役員専務CTO 情報セキュリティ担当 技術・営業統括本部長 滝澤光樹
インテック・ネットコア専務取締役CTO 荒野高志

ユビキタス時代が到来する。インターネットのアドレスは現在のプロトコルIPv4では限りがある。無限大と言われるIPv6への移行に向け、日本は、世界はいまどのように対応しようとしているのか。
今回は、第1回のスペシャルゲストとして、東京大学 江崎浩教授をお迎えし、インテック 滝澤専務を加えて、IPv6が実現する次世代ネットワーク社会とその課題について議論した。

 


v4の枯渇、2010年にも

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荒野 このままではv4のアドレスが足りなくなる危機感から、江崎先生とv6アドレスの標準化を提案してきました。これが国際標準化ルールとして世界で認められたのが1990年代半ばのことです。
江崎 そうですね。v4の枯渇はここにきて、現実味を帯びてきました。
荒野 はい、以前は、2020年ごろに枯渇するといわれてきましたが、直近のリサーチでは2010年ごろに早まりました。例えば2007年にシステム更新を迎える企業にとって、次の更新のタイミングは2012年でして、この間にv4アドレスは枯渇するかもしれない。日本のv6化はまさに「must」で進めなければなりません。
滝澤 総務省は1月、政府機関で利用するすべてのネット関連機器を2008年度までにv6に切り替えると発表しました。
江崎 米国政府も2008年にはv6に移行するといっています。米国のアドレス標準を決めている機関でも2008年と明言しています。v6では日本やアジアに遅れをとっていたアメリカがいよいよ動き出しました。

荒野 インテック・ネットコアはv6の研究開発、普及啓蒙活動とともに、多くの企業と協力しあい移行へのガイドラインを策定したほか、総務省の実証実験にもコーディネート役で参画しています。また、アドレスをサービス単位で使い分けるマルチプレフィックス技術も研究しています。現在、実用化に向けインテックとともにv6関連の新しいソリューションの開発を進めています。
江崎 荒野さんとはv6アドレスの国際標準化を目指す過程で、次世代ネットワークの姿やITの利活用について議論してきましたね。ここも大切なところで、世界から高い評価をいただいています。

ワールドワイドで最良なv6の世界をデザインしたい

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江崎 インテックの中尾会長が会長をされているテレコムサービス協会に、VoIP推進協議会がありますね。私もここに参加しています。
滝澤 グローバルにVoIPを広げるにはやはりv4では足りませんね。携帯電話もv6に移行しようという中で、テレコムサービス協会の取り組みは重要でしょう。
江崎 VoIPがどうv6化していくか懸念をもっています。日本と韓国はすごく先行していますが、残念ながらv4。ところが、進んでいない国はv6からスタートするかもしれない。移行のためのコストはゼロですから、v4で先行するわが国が追い越される可能性もあるわけです。同様の議論は、ビルのファシリティ管理にもいえます。4、5年先に枯渇するv4をいまから建てるビルに導入していくとすれば、リスクが伴うことも知っておくべきでしょう。
荒野 さて、v6においてはグローバルなネットワークの視点にたって、アドレスをどう管理するかが大切になります。
江崎 アドレスの所有権を国家単位で規制する方向がありますが、これは危険です。産業界が主導権を発揮してほしいところです。

荒野 国別にアドレスをどう振り分けるかではなく、世界にとって最良のv6のあり方をきちんと設計するべきでしょう。プロバイダー以外のさまざまな業界がアドレスをもったときに、どんなネットワークで、どう管理し、サービスを提供していくかの議論が大切です。
江崎 放送や電話だけではなく、幅広い業界にv6を利用してもらう必要があります。システム・インテグレータに問われているのは、v6の効率的かつ安全なネットワークにより、ユーザに貢献することです。
滝澤 一般の企業ではまだ、「v6って何?」という感じです。わかりやすい言葉でv6の存在を啓蒙していくのがインテックの役割です。テレビ、携帯電話、iPodなどあらゆる機器にアドレスが付与され、ディスプレイが人と情報の接点になります。企業においては、ディスプレイの分野を早く押さえることも戦略上重要になってくるでしょう。
江崎 企業のデジタルコンテンツはビジネス用データ、プロモーション用データなど、映像系を含まないものまでたくさんありますからね。
滝澤 映像コンテンツはもちろん、いままでパソコンでしか出せなかったあらゆるデータの出口が今後拡大していきます。
荒野 一方で、入力も非常に容易になります。カメラやセンサーがネットワークにつながり、IPという統一的な方法で吸いあげられデータベースにたまる。入力手段のセンサーも安価になり、いろんなことが可能になるでしょう。

膨大な情報の管理も大きなテーマ

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滝澤 こうして情報が溢れてきますから、v6の管理だけではなく、そこにある膨大な情報の管理を考えておかなくてはなりません。ようやくその重要性が認識され始めました。
江崎 情報をどこで集約しどこで流すか、社内の情報管理も含め全体像をきちんとつかむ必要がありますね。こうした管理は全体のシステムデザインの中で考慮すべき課題でしょう。
滝澤 特に製造業の場合、これからは部品を国内だけでなく、グローバルに管理していく必要がでてきます。そのためには、裏側で大量のデータを管理できるシステムが重要なんです。国内だけでなく世界の規格で動くシステムでなくてはいけない。お客さまはまだその認識がされていないようです。
江崎 イントラネットがはやったとき、日本企業はネットワークをすべてプライベートアドレスで構築しました。ところが、外との接続が必要なエクストラネットになると、そのアドレスの付け替えに膨大な人件費をかけることになりました。v6への移行にはこの経験を生かして、初めからグローバルに動くであろうという前提で、デザインすべきでしょう。

滝澤 ネットワーキング化するときには、どこをグローバルに設定しておくのか、これがコストに反映してきます。

企業の大規模システムにv6を統合

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滝澤 企業におけるv6のかたちは、「ERP」「CRM」「SCM」などの大きなシステムに、外との接点としてv6が統合されていくものだと私は思っています。u-Japanの中では消費者の利便性ばかりがクローズアップされていますが、v6を経済活動、企業間取引にどう役立てていくか、これがわが国の発展につながるはずです。
荒野 企業価値が増大するその橋渡しをするのがインテックグループの役割でしょうね。
滝澤 そうです。v6でITの運用はさらに複雑さを増す可能性があります。運用の仕組みを誰かがしっかりとわかりやすく作ってあげないと社会インフラとしてv6は定着しません。商売にしにくいところですが、スペシャリストとしてわれわれのポジションを確立できるチャンスでもあります。
江崎 よくできたシステムというのは目立たないもの、影に隠れてやってくれるものです。また、わが国がIT先進国になった以上こうした仕組みづくりが求められてきます。

重要になってくるアプリケーション基盤

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滝澤 これまで、インテック・ネットコアが推進役になってv6の実験を行い、インテックグループにノウハウもたまってきました。今後はネットワークとコンピュータの間に入り、様々なアプリケーションを共通で使えるようなプラットフォームを作りたいと思っています。われわれがカスタマイズすることもあるし、インターナショナライゼーションもあるでしょう。大きなグランドデザインを描いているところです。
江崎 インテックには具体的に世に送りだそうとしているプラットフォームがあるのでしょうか。
滝澤 はい。日用品・化粧品業界VANのプラネット社をインテックは1985年に設立し、ライオン社などメーカーと卸店のEDIプラットフォームを構築しています。同じようにファイネット社という食品業界VANもあります。これら電子商取引のプラットフォームの次世代バージョンが実用段階に入りました。グローバル・スタンダードになりつつあり、ここにv6をどう埋め込んでいくか検討を進めています。
江崎 物流がこれだけグローバルになってきましたからね。v6はクロスインダストリーに流通するために存在しています。インテックにはしっかりしたプラットフォームと事例を作っていただきたい。そうすれば、みんながやる気になってきます。

滝澤 ありがとうございます。消費者から生産までをつなぐバリューチェーンの中でオープンに使ってもらえるプラットフォームを目指しています。
荒野 その場合、重要になってくるのは認証ですよね。
滝澤 ネットワークサイドの認証については、インテックは世界で最も信頼される認証局に与えられる「WebTrust for CA」に適合しています。日本で2社しかないもので、パブリックな認証局や、企業ごとの認証局を提供していきます。
江崎 それはすばらしい。世界的には海外企業の独占状態なので、商取引のもっとも大事なところの認証は、日本でもプラットフォームをきちんと押さえる必要があると思います。
滝澤 米国カウンターペイン社とも提携し、セキュリティのマネージドサービスを行っています。サービスとしてのセキュリティを担っていくことをインテックは目指しています。
江崎 まさに、プラットフォームですよね。
滝澤 さて、江崎先生にとってv6の商用化の次のテーマは。
江崎 v6でグローバルにデータが流れる基盤を整備しましたら、次のターゲットは「分散コンピューティング」です。データをインターネットを使い物理的に離れた複数のコンピュータで処理する新技術です。コンピュータでデータをどう扱い、どうマネージメントするかというところです。ぜひ、一緒に実証実験をやりながら、ビジネスとして世に送り出していきましょう。
荒野 インテックが企業ニーズを吸い上げ、ネットコアが大学と一緒に研究を行う。その成果を公的機関とともに実験し、標準化活動で普及促進し、最終的には業界に戻し企業発展に役立てる。このように、産学官が一体となって、新しい市場を創造していきたいですね。
滝澤 これからもぜひ、よろしくお願いします。

荒野の一言!

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収録は1時間半をかけ、たっぷりと議論いたしました。時間がたつにつれ、徐々に互いの論旨をぶつけ合う刺激的な鼎談でした。
なかでも、滝澤専務のERP、CRM、SCMなどのシステム統合におけるIPv6のあり方に、江崎先生のグローバルな視点が加わり、大変興味深いものとなりました。
企業内部のシステム融合は、アプリケーション連携でなんとか実現できますが、企業間のシステム融合や顧客との連携には、ネットワークが介在してきます。アプリケーション技術とネットワーク技術の融合が不可欠であり、IPv6はその融合に欠かせない機能を提供していきます。数年後にはそれが実現しているでしょうから、その頃にまた同じメンバーで議論したいと思います。そして、さらに一歩先の議論ができるといいですね。ますます「IPv6をビジネスに活用する」という思いを強くしています。

<関連記事>
鼎談の内容の詳細については、下記記事を参照ください。

IPv6で世界はどう変わる?
 > IPv6がもたらす世界
 > IPv6企業ネットワークモデル
 > IPv6国際間コラボレーションネットワークについて

IPv4の枯渇の情報(海外サイト)
 > Tony Hain 氏の予測
  A Pragmatic Report on IPv4 Address Space Consumption by Tony Hain, Cisco Systems
 > Geoff Huston 氏の予測
  Numerology

 
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荒野高志プロフィール
荒野高志/1986年、東京大学理学部情報科学修士課程終了後、国内大手通信会社に入社。国内最大級ISPのネットワーク設計、構築、運用を担当。その後、日本および世界のIPアドレス管理ポリシー策定のため、JPNIC-IP WG主査や、99年より国際的なインターネットガバナンス組織であるICANN ASO 副議長を務める。2002年、インテックネットコア設立時に専務就任、現在、代表取締役社長。(財)インターネット協会Y2KCC/JP代表としてインターネットY2K問題対応に取組んだ。最近では社内外で次世代ネットワークプロトコルであるIPv6の実現・普及啓蒙活動に従事しており現在IPv6 Forumのボードメンバ、(財)インターネット協会IPv6デプロイメント委員会議長などを務める。

ゲストプロフィール
江崎 浩(えさき ひろし)

1987年 九州大学 工学部電子工学科 修士課程修了。同年4月(株)東芝 入社、総合研究所にてATMネットワーク制御技術の研究に従事。1990年より2年間、ベルコア社(米国)、1994年より2年間、コロンビア大学(米国)CTR(Centre for Telecommunications Reserch)にて客員研究員、高速インターネットアーキテクチャの研究に従事。IETFのMPLS分科会、IPv6分科会では、積極的に標準化活動に貢献している。1998より東京大学 大型計算機センター助教授。2001年4月より東京大学 情報理工学系研究科 助教授。2005年4月より教授(現職)。WIDEプロジェクトボードメンバー。MPLS‐JAPAN代表、IPv6普及・高度化推進協議会専務理事、JPNIC理事。工学博士(東京大学)。


[主な著書]
インターネット概論 小林/江崎 共立出版
IPv6教科書 江崎監修、IDG出版
MPLS教科書 江崎監修、IDG出版
IPv6時代のインターネットプロトコル詳細、毎日コミュニケーションズ
RFC辞典、笠野監修、アスキー出版
インターネット辞典、江崎監修、I&E研究所
インターネット用語辞典、江崎監修、I&E研究所