そもそもITの使い方は効率化のためだけではありません。価値創造のためのものでは、ないでしょうか。ITによって新しく創造された価値により需要が喚起され、雇用が創出され、経済が回りだすような研究開発が望まれています。これに大きな役割を果たすのが次世代プロトコルIPv6です。1992年に規格策定が始まり、いまIPv6はビジネスのスタートラインに立ったといえます。
IPv6の分野では日本は常に世界のリーダシップをとってきました。日本の提案で、KAMEというIPv6インプリメンテーションが標準化に大きな貢献をし、また、IPv6アドレスルールのグローバルスタンダード化が成し遂げられました。日本は世界の中でプロデューサー的役割を求められ、しっかりしたビジネスモデルと高度な技術に基づいた展開ができるか、これが問われています。
さて、さる2月21日にラスベガスにて、IPv6 World Congressという、世界各国からIPv6を代表するメンバー約20名が招待されたクローズドな会合が行われました。各国のステータスレポートが発表されました。
トピックとしては、アメリカがMetroNet6というプロジェクトで、カリフォルニアv6タスクフォースが中心となって、サクラメント市でアドホックネットやWiFiをからめたv6ネットを構築し、その上でテロや防災向けの緊急通報システムなどを実験するとのこと。フランスやルクセンブルクなどでも同様の実験が進められています。中国では、ファシリティ管理や監視サービスなどでテストサービスが実施される見込みです。インドなどでは政府がIPv6について言及するなど、インドv6関係者の努力も少しずつ実を結びつつあります。中南米、アフリカなどではアカデミック以外では具体的な進展はあまりないようですが、各国でIPv6フォーラムができるなど、意識ある人が少しずつ普及啓蒙に向けた取り組みを開始しています。
日本からは、東京大学の江崎教授と私が発表しました。私は日本でのIPv6実用例を分析し、IPv6初期導入のパターンとして次の3つのモデルがあることを提示しました。
- スムース・トランジション(Smooth Transition):
システム更改時にv6を利用可能な環境にしていくモデル
- フォースド・デプロイメント(Forced Deployment):
政府などが強制的に導入を進めるモデル
- ソリューションオリエンテッド・デプロイメント(Solution-Oriented Deployment):
IPv4/v6に関係なく「問題を解決する」ソリューションとして導入するモデル
このように、IPv6の導入の考え方や知見について約2年は日本がリードしているのです。
IPv6の究極のメリットはアドレス数の上限を実質的に取り払うことで、コンピュータだけでなくすべての「もの」にアドレスを拡張できることです。さらに、社会インフラとして単にオープンでシームレスな環境を提供するだけなく、自由にセキュリティのパスが張れるような仕組みをも用意しています。あとはこの土台の上に何を創るかなのです。
「これからのインターネットは造るではなく 創る ものになる」と慶應義塾大学の村井純教授は語っています。具体的にIPv6を自動車に応用すれば、車両の自律制御はもちろん、交通事故死や交通渋滞など負の要因を極小化できるようになる。また、ビルやエリア単位で照明や空調を管理することで、30%以上の省エネも可能となります。さらに、IPv6が遠隔医療などにより医療のパラダイムを変え、患者を待たずして医療機関から患者へのアプローチもできるなど、さまざまな分野で可能性は広がっていきます。
現在のところ、このような 創る を視点にIPv6の具体的な導入がはじまりつつあるのは、日本だけなのです。インターネットによる産業革命期を、日本は先頭で走っているのです。
IPv6の全面的な移行までは、利用しやすいところに導入することになると思います。私は2007年から2008年ごろが普及のブレークポイントになると考えています。
IPv6はすべての業界のサービスや商品にネットワークという付加価値を与えてくれます。ネットワーク関連のサービスや商品を提供する業界、企業がブレークの年までに何を準備しておくべきでしょうか。これが各企業、そして日本にとっての勝負の分かれ目になるのではないでしょうか。
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