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IPv6ご意見番


新市場を創るマーケティング術 ~パナソニックコミュニケーションズ株式会社 小林氏を迎えて~


前編)に引き続き、パナソニック コミュニケーションズ株式会社との共同企画をお送りします。今回の後編は、IPv6の普及についてのお話からマーケティングのコツにいたるまで、興味深い話題が満載です。


マジックナンバー7

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小林 僕もいろいろな商品を出してきましたが、それが普及するときに、市場普及率7%というマジックナンバーがあります。ラッキーセブンの7。7になると後は、仕掛けです。仕掛けをしない限り、拝んでいて「頼みます」だけではどうにもならないわけです。「仕掛ける」と言うと非常に言い方が悪いですが、これが本当のマーケティングです。そのマーケティングをやるのは、テクノロジーをつくった人たちが得意なのかとなると、ちょっと違うと思います。
荒野 なるほど、7というのは面白い数字ですね。
小林 いわゆるマーケティングというか、プロモーションです。やはり7のあたりまでは、いろいろな人たちとやらなければいけない。業界の人たちがみんな手を取り合って、この7%のマジックナンバーのところまでまず持ってくると。そこに今度はさらに加速させるための仕組みをつくっていく。それぞれみんながもっとプロモーションする、アピールする。
荒野 なるほど。実は、IPv6の普及度何%というのをうちで測っています。これはインターネット協会さんと一緒にやっていて、DNSの実装度やウェブサーバの実装度、アクセスやトラフィックなどいろいろな角度で測っていますが、結構興味深い結果が出ています。例えば、あるドメインの下にあるウェブサーバやDNSの実装度を見ると、co.jpつまり企業網がまだ0.5%以下です。それで、案外高いのはgo.jpで1.5%。これは政府系のネットワーク。そして、ad.jpというドメインが大体4%。これはJPNICの会員、基本的にはISPの人たち。この4%というのは先ほどのマジックナンバー7とあわせて考えると、その業界で大体の人たちは、理解されている。あとは次の7というところをどうやって目掛けていくか、7を超えたらどうやるか。

小林 もうちょいですね。
荒野 だから、もうちょっと啓発を含めてやらなければいけない。
小林 新しい事業をつくるときが一番面白いときです。この1から4ぐらい。そして、7にいったらもう非常にハッピーなときですね。それで、やはりそれをさらに普及させる、7からの仕掛けで、それも『ぶわっ』といく。この快感というのは非常に……(笑)。
ただ、ちょっと僕もいけないけれども、怒られるかもしれないけれども、IPv6の業界がこの数年前まではわーっとやってきたと思っています。だけど、ここにきてトーンが少し下がっているような感じを受けています。
それで、今日の僕の思いの一つは荒野さんへ「IPv6は最近トーンダウンしちゃったじゃない、どうしたらいいのでしょうかねぇ!」ということもあるわけです。
今こそ本当はもっと騒がなければいけないと(笑)。
荒野 そうですね。
小林 僕がPLCをIPv6対応にしているというのは、もう常に何でもつなげるという、もうコミットした社会にきてやっているのに……。だから、IPv6のところが「もうIPv6でないと駄目だ。IPv6でみんなやりましょう。」と、もっともっとやる時が来ているのではないかと思っています。
荒野 もう当たり前だと思います。それで言うと、これはちょっと反省も含めてですが、僕は、2000年ぐらいにIPv6サミットの実行委員長を務めました。そのときに慶應大学の村井先生にお話ししてもらったり、村井先生経由でソニーの出井さんを呼んだりしたんですが、ちょっと早かったかもしれない……(笑)。
小林 そこですよ。僕もそう思っています。僕も中国で、IPv6のサミットがあって、30分ぐらいプレゼンをしたことがあります。よくあんな恥ずかしいことをしたなと思っていますが(笑)、ただ、あの時代でさえみんながやろうとしているのに、今、何かちょっとトーンが下がってしまって、結局何か「まあやるところだけがやればいいのではないか」というふうになっていないかと……。
荒野 ええ。でも、一回盛り上がって、実態が分かってきたというのもあります。それは、IPv6とIPv4で、本質的にできることはそれほど変わらないとか、こういう使い方をするとものすごく効率が上がるとか、いろいろな知見が出てきました。ただ、この辺から企業論理からすると、「そろそろ儲けろよ」と言われてしまう……(笑)。
小林 ああ、それはありますよ(笑)。そう。確かに人間というものは、心理的に何年かやるとやはり飽きというか、また同じことを言っていると、「あいつ、いつまでも言っているな」という感じになりますが、やはりそれを続けていかなければいけないなと。
うちの社員にも、もう数年前から宿題で「IPv6で何のサービスがあってメリットが出るのか?」と言っているけれども、いまだに答えをもらえていないです。それは僕もアンフェアな質問していたと思っています。だけど、続けなければいけないと思っています。

IPv6の普及に向けて

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小林 「どこでもドアホン」でもそうですが、やはり、当初は「こんなもの必要?家中どこでもなんて、そんなに人は来ないでしょう?」と、社内でも言われました。
荒野 (笑)
小林 ところが、会議をしている連中を見たら、いつも朝早くから真夜中まで会社にいて、「おまえ、家に何時間いる?」と聞いたら、「ほとんどいない」と。こういう人たちが考えてもだめ。だから、子どもが生まれて1年休んで戻ってきた女性社員にこの話をしたら、「ぜひ欲しい」と。というのは、子どもをせっかく寝かせているのに、宅急便が来たり、訳の分からない人がピンポンと来る。そういうときにパッと見られるといいとか、ちゃんとニーズがあるわけです。
それから、僕は、「技術屋さんもお客さまのところに行きなさい」と言っています。お客さまのところへ行かなければ、カメラを使ってもらわなければ、分からないんです。100万回話しても分からないですよね。でも、使ってみたら「なるほど」となります。そして、どんな要望があるのか聞いて、「それ、できます」と言えればいい。お客さまから「何でそんなことがうまくできるの?」と言われたら、「いいんですよ。できるんです。」と。そっちへいくと(笑)。「どうしても教えてくれ」と言われたら、「IPv6という技術が入っているから、本当にセキュアなんです」と。
荒野 お客さまはシステムの機能に興味があるわけで、つくり方はどうでもいいですからね。私どもも2000年ぐらいからずっとIPv6をやってきていて、「IPv6で何か新しいことができるのではないか」と、やたらと追い掛けていた時代があります。これは多分、我々だけでなく、本当に日本中そうだったと思います。実証実験というと、IPv6で新しいこと……。今どきIPv4もものすごく技術が進歩しているから、頑張ってやればNATでも何でも使って、実現できるんです。でも、「では、やってみましょうか」となったときに、IPv6のほうがはるかにやりやすいし、筋が良いものが多いし、特に今後の拡張性を考えたら、絶対にIPv6のほうが有利だというものは多いのです。
小林 僕らは、「構築するシステムでカメラを使わない、いわゆるビジュアルなアプリケーションを入れないということは今後ないだろう」という極端な言葉を今あちこちのシステム会社に行って言っています。「何であなたのところは使わないの? 教えてくれ」というぐらいに。そうすると、ディスカッションしていくうちに、「そうだね。使ってみようか。そういう分野があるね」というふうになると思います。そのときに、「IPv4のカメラとIPv6のカメラがこれだけ違いますよ」ということが自然に分かるような形。さらに言うと、IPv4からIPv6へ自然に切り替わるような内容を、そろそろ業界としても示していかなくっちゃ。
荒野 そうですね。
小林 だから、僕らは全部のネットワークカメラにIPv6を入れています。ということは、言葉で言わなくても実行で移って行くわけです。だけど、もっとそれを加速するには、一般の人たち向けにはもっとイベントとか、そういうのをしていただくほうがいいと思っています。この辺のものは一企業で、とか個別企業でというのでは力が弱いので、せっかく業界に委員会や協議会なんかがあるんだから、やはりもっとイベントをやったりせなあかんと思うわけです。僕らも、「つくる者にとってIPv6というのはいろいろな商品にマストですよ」と言って回ります。
荒野 なるほど。

小林 SDカードというのがありますよね。このSDカードというのは、松下グループの中でも昔は遅れていました。ただ、先を考えたら非常に便利なものになるということで、使わなくてもいいから搭載しろというぐらいの強硬手段でやりました。「すべてのものに搭載しなさい」と。ですから、携帯電話には当たり前に入るようになった。僕らのところはPHSしかやっていませんでしたが、PHS/携帯電話に入れたのは僕らが初めてです。
それから、SDカードのプロモーションのために、展示会があるたびにSDパビリオンというのをやりました。ブースを共同出資して、SDを搭載している機器を全部並べる。毎年どんどん増える。そのうちある時から、ぴゅーっとくる時になると、「入っていない商品というのは何なの?」「お宅のはSDが入っていないの?」となるわけです(笑)。
荒野 そのロジックはいいですね。
小林 だから、カメラもSDが入っていないと、「何で入っていないの?」と。「使わないでしょう」と普通言うけれども、入っている・入っていないというだけで、やはり信頼感などが変わってくる。特にカメラは長く使うから……
荒野 いいですね。そのシナリオは(笑)。「IPv6が入っていない」……。「ええっ?」。みたいな感じですね。
小林 「何ていう会社なの?」と(笑)。だから、IPv6だったら「セキュアなんです」と言うだけでも、「どんどんいろいろ普及するからセキュアなんです」だけでもいいと思います。セキュアな内容というのは、今ますます大事な内容になっているわけだから、その中でIPv6 Ready Logoが付いて当然と。僕らもIPv6 Ready Logoを取って、もっとロゴもアピールして、ロゴがあって初めて安心できるネットワーク機器……。だから、ネットワークというよりも、つなぐという商品はすべてIPv6 Ready Logoはきちんと取る。あるいは取りやすいようにしていかなければいけないと思います。
荒野 企業には、個々に競争するところはもちろんあると思うのですが、そういう風に産業を興そうというときには、みんなでやらなければいけないところもありますね。あとは、こうやってうまくいったという事例を…うまくみんなで共有しましょうと。それは発表する会社にとっても、それはすごくいい宣伝になるので、どんどん宣伝してもらっていいから、その代わり、IPv6を使ったときにこんなメリットがこういう形で出たということを言ってもらう。今まで協議会のワーキンググループで事例発表会を4回ぐらいやっています。かなり好評で、明確に「こういうところはメリットだ」とか、「ああ」と思わせられることが幾つかあったりして、これはかなり面白いです。
小林 やはり、それがもっといろいろなところに蓄積されて、勝手に事例を検索できて使えると良いですね。それはもうできる世界に来ているから、それをやらなければいけないと思います。

「今だけ」、「ここだけ」、「私だけ」

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小林 ユビキタス社会といいますが、若い女性や独身の人がアパートに帰るとか家に帰るというのは非常に恐いことがあるわけです。帰る前に家の中を見ることができる、確認できる、あるいは何かあったらすぐその情報が来るとか、状況が確認できるとか、そういう世界がもっと普及しなければいけない。あるいは、鍵代わりにRFIDでドアを開けて、ドアが開いたら全部PLCでIPにつながっているから、玄関やリビングの電気がついて、クーラーが入るなど、一通りのことができる世界。こんな風に、本当に「ああ、なるほど」と。見て分かりやすくて、「これはいいね」というような見せ方をしていくというのはやはり重要だと思います。
アメリカなどはかなり大きな家などがあるので、ホームコントロールやセキュリティの中でリンクさせながらそれをやりつつあるけれども、まだまだ標準化された内容になっていないことと、「IPv6」という声が全くしないです。だけど、それこそ一番セキュアな内容で、いろいろなものに振られていくわけですから、もっとIPv6ということにしておかなければいけないところにきていると思います。だから、先ほど言った「ものとものがつながる」というのは、今までなかなかなかったけれども、ようやくここにきて話が現実になってきました。僕らとしては、PLCでもっといろいろなものを考えようと。2009年、2011年ぐらいまで加速するのではないかと思うので、そのときにセキュアできちんとして、もっとマルチキャストなりいろいろなことができるのはIPv6だとなっているわけです。

荒野 今、我々でまさにやっているのが、認証をキックにして、コンピュータでも非コンピュータでもとにかく特定の端末に特定のアドレスを振るというものです。さっきの「マルチプレフィックス制御技術」を使うわけなんですが、去年、実証実験をして、macアドレスはすごく簡単にできました。それから1X認証などでも動くようにしました。そして次はRFIDのインターフェイスを実装しようと考えています。たとえば、あるPCに派遣社員さんが自分のICカードの社員証をピッとかざすと、派遣社員さんのネットワーク、つまり、その社員しかアクセスできないようなネットワークが、一人一人別々にコンフィグレーションされるとか、病院の場合ですと、患者さんや看護師さんなどの自分の資格によって自分がアクセスできるネットワークを作るといったイメージです。先ほどの鍵代わりのRFIDというのにも使えるはずです。
小林 それは大きいと思います。これは私が言っているわけではなくて、あちこちで今言われていますが、ユビキタスだと、「いつでも」、「どこでも」、「誰でも」と言いますが、実際はそこで何かやろうと思ったときには、「今だけ」、「ここだけ」、「私だけ」のような……。それがセキュアであり、IDによる認証でありというようなものが欠かせないですね。間違いなくそういう世界だと思います。
荒野 話は尽きないのですが、最後に言い残したことなどあれば。
小林 僕らもちょっと改めてこういう機会にもう一回考えてやらなければいけないのは、社内でもそうだけれども、「IPv6って何なの?」という声があったときに、「教えてやる」というプッシュ型になっています。ですが、「いや、そんなことは知らなくてもいいよ。こんなことができますよ。これだよ」というぐらいのものが既にできてきているわけだから、そこを今度は利用して、もっと盛り上げていくべきです。うちの営業所で言うと、例えば居酒屋の人に、「これはコインランドリーでものすごくいいんです。こういう事例があるんです」と一生懸命やっても、居酒屋の人は「他業種だから関係ないな」という感じになるわけです。ところが、同業者の事例を持って行くと、「何?あそこはやっているのか」となるわけです。
荒野 そうですね。面白いですね(笑)。我々もちょっと気持ちを入れ替えて。よーし、と。小林さん、これからもPLCとRFIDとIPv6を合言葉に、いろいろご一緒させていただけばと思います。今日は、ありがとうございました。

(終了)
 
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Vol.3 イノベーションを巻き起こせ ~マイクロソフト 及川氏を迎えて~
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Vol.5 新市場を創るマーケティング術 ~パナソニック コミュニケーションズ株式会社 小林氏を迎えて~(後編)
Vol.6 IPv6サミット2006実行委員長に聞く
Vol.7 IPv6サミット2006レポート 展示ブース編
Vol.8 IPv4アドレス在庫の枯渇近づく! ~JPNIC前村氏をお迎えして~
Vol.9 IPv6とリモートメンテナンスとユビキタス

ゲストプロフィール
小林 英次(こばやし えいじ)
昭和48年(1973年)九州松下電器入社。
約13年米国Panasonic社に駐在し、データー機器・電話・FAX・PBXなどの
販売活動に従事。
帰国後は新規事業企画を担当しつづけ、現在はホームセーフティー事業カテ
ゴリーを担当し、ネットワークカメラ・インターホン・PLCの開発、国内
海外での事業化を推進中。
IPv6対応端末として世界初のIPv6ネットワークカメラを市場投入。

荒野高志プロフィール
荒野高志/1986年、東京大学理学部情報科学修士課程終了後、国内大手通信会社に入社。国内最大級ISPのネットワーク設計、構築、運用を担当。その後、日本および世界のIPアドレス管理ポリシー策定のため、JPNIC-IP WG主査や、99年より国際的なインターネットガバナンス組織であるICANN ASO 副議長を務める。2002年、インテックネットコア設立時に専務就任、現在、代表取締役社長。(財)インターネット協会Y2KCC/JP代表としてインターネットY2K問題対応に取組んだ。最近では社内外で次世代ネットワークプロトコルであるIPv6の実現・普及啓蒙活動に従事しており現在IPv6 Forumのボードメンバ、(財)インターネット協会IPv6デプロイメント委員会議長などを務める。

<JPNIC>
日本国内でIPアドレスの割り当てを行ったり、インターネットに関する調査・研究や啓蒙・教育活動を行っている。